2015年5月26日火曜日

2626:海外M&Aの失敗する理由ですか、なるほど!!


単なる参考です。いろいろ勉強になるね。

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グローバルM&Aが失敗する理由(2

ダイヤモンド・オンライン 525()130分配信

 

 前回、グローバルMAにおける失敗の大部分は、子会社に対するガバナンス意識および能力の欠如にあり、ガバナンスを発揮するためには、そのためのプラットフォームが必要であると述べた。では、実際にどういったものが必要なのだろうか。

 

● 「任せるけれど見ている」関係と仕組みはできているか? 

 

  一言でいえば、「任せるけれど見ている」関係と仕組み作りだ。まず、基本的な株主と経営者との関係を築き、経営者に経営者としての役割を全うさせること。そして、それを動かすプラットフォームを作ること、である。このプラットフォームは、さらに二つに分かれる。企業価値を向上させることを追求した計数系のプラットフォームと、企業理念を貫徹させることを追求した理念系のプラットフォームである。筆者はこれをよく、「左脳系プラットフォーム」と「右脳系プラットフォーム」と呼んでいる。したがって、任せるけれど見ている関係と仕組み作りのコンテンツは、「左脳」と「右脳」、そしてこれらをつなぐ「脳梁」となるべき基本的な株主と経営者との関係、あるいは経営者の役割となる。

 

  今回は「脳梁」を採り上げよう。どんな株主だって、信頼できない経営者に自分の資金を託したりはしない。したがって、ガバナンスの基本にあるのは相互の信頼である。信頼が崩れた関係は大抵揉め事を起こす。買収者と被買収者の関係も同様である。被買収企業の現経営陣に経営を委託するのであれば、信頼を醸成していることが第一。そのためにはトップ同士が嫌というほど濃いコミュニケーションを確立している必要がある。信頼できないのであれば任せることなどできない。

 

  とはいえ、信頼しているのだから細々した契約などは不要、と考えるのは間違っている。信頼は信頼、契約は契約。いつまでに何をやってほしいのか、それに応じた処遇をどのようにするのか、責任と権限はどのようなものなのか、等々。もし、買収した側が「とにかく売上を上げてほしい」と思っているならば、そのような内容で契約を結ぶ必要がある。業績が悪かったら取締役会を開いて解任すればいいから契約では触れない、などと言っても、非常勤で派遣されるにすぎない日本企業側の取締役が、実際にそれを行うのは不可能に近い。逆に、簡単に辞められても困るので、こうした事々を十分に想定して取り決めておく必要がある。

 

  一方、現経営陣を信頼できなかったらどうするか。任せられないのだから入れ替えを考えなければならない。「何とかなる」と思っても、これは絶対に何ともならない。外部登用するにせよ、日本から派遣するにせよ、任せられる人材が必要だ。それが実現できなければ、買収なんて辞めたほうがよい。所詮上手くいかない。

 

● CFOポジションを的確に押さえているか? 

 

  人材を送り込む時にもいくつか要諦がある。大事なのだが意外に行われていないのが、CFOポジションを押さえること。日本では経理に毛が生えた程度にしか思われていないこのポジションだが、多くの海外企業では経営管理の心臓部であり、ほとんどすべての情報はここに集まってくる。ここを押さえなければ何も始まらない。CFOだからといって、日本流に考えて、経理一筋何十年という人材を送ってはいけない。そういう人材は補佐がいい(その役目は重要である)

 

  

  若手のお目付け役などはもってのほかである。既に任についているCFOの斜め上あたりに屋上屋を重ねるようにこうした人材を置く企業もあるが、ほとんどケンカを売っているようなものだ。そもそも「お目付け役」などというわけのわからない人材を派遣すること自体が害悪だ。何を目的とした、どういうミッションを持った職務なのか明確でなければならない。

 

  買収した側である日本企業は、非常勤の取締役を送り込んで取締役会の過半を握る。取締役会は通常月一回くらいは開かれるだろう。だが、その時に非常勤の取締役はきちんと出席できるだろうか。実際にはなかなか難しい。ましてや、株主総会は定時であれば年一回である。こうしたところでスピードの速い海外事業のさまざまな意思決定を効果的に行っていけるだろうか。答えはおそらくNOである。したがって、実際には経営会議やエグゼクティブ・コミッティーなどを置き、少なくとも週一回程度のペースで回して、双方の経営陣同士での密な討議を行う必要がある。ここまでが、基本的な株主と経営者との関係を築くという意味での「脳梁」ガバナンスである。

 

  国境を越え、民族の壁を越えたMAを成功させている会社は、例外なく、この「脳梁」ガバナンスに大変気を遣っている。これは洋の東西を問わない。一方、失敗する会社の多くは、ガバナンスには大抵理解が浅い。こうしたことは、買収した企業との関係だけではなく、自らの株主に対する態度にも表れることがある。

 

● MAが経営者の野心を満たす道具になっていないか? 

 

  決算説明の発表などで、こうした発表に出くわす経験はないだろうか。中期経営計画における売上予測を示す棒グラフ。最終年度だけ非連続に伸びている。その部分については「海外でMAによる成長を目指します」。しかし、「内容についてはまだ決まっていません」。

 

  もちろん、なかには頭の中でじっくり長期的なデザインを描き、競合との関係も熟慮したうえで情報開示の手法に気を使っている名経営者も多くいる。そういう場合には大抵、今後の戦略ストーリーについて投資家もアナリストも共有できている。

 

  困るのは、「何も決まっていない」といって、本当に何も決まっていない場合だ。投資家としては、そんな迷経営者に無条件で資金を預けておく気はない。使わないならぜひ速やかに還元を。だが、こういう経営者に限って、心の中では「自分の会社、自分のカネ」と思っているので“他人”になどには渡したくない。だから、資金を手元に置いておくためにMAという資金使途を隠れ蓑に使う。MA用と称される余剰資金がうず高く積まれ、時にそれは猛然と浪費される。

 

  すなわち、MAは経営者の野心を満たすために使われがちである。中計を達成して、迷経営者から名経営者に脱皮を果たしたい。未達の責任を取るなんてまっぴらだ。花道を飾るために、とにかくトップラインを上げよう。既存事業には頼れないので、ではMAだ―――そして死屍累々の失敗案件の山が築かれる。こんな状況になっていたら、どんなにプラットフォームを整えても無駄である。

 

  では、次世代の成長のために真摯に外部からの経営資源の獲得を考えたとして、「脳梁」ガバナンスを支える「左脳」「右脳」のプラットフォームはどうあるべきなのか。次回はこの点について考えたい。

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