2008年11月26日水曜日

10:中央アジアの渇水問題(その2)

そもそも貯水池の水位が下がったことだけで渇水とは如何なる心理なのか?

通常貯水池計画では水位が下がることは想定済みであり、FSL(常時満水位)とMSL(低水位)の間での水位が変動する。貯水池には二つのタイプがあり、経年貯留(over-year storage)と単年貯留(within-year storage)がある。単年貯留ダムは調整量が小さくほぼ毎年FSLに復帰する。しかし、経年貯留ダムは調整容量が大きく、FSLに復帰する期間は10年に及ぶ場合がある。シルダリア川上流のトクトグルの場合は10年に一度の渇水を想定し主に下流の灌漑用水を満たすためのダム運用を想定していた。従って最低水位になることは想定内の現象である。

水力発電を有する同ダムはソビエト時代には冬季発電放流は毎秒180トンに抑えられていた。しかし、ソビエト崩壊後、キルギスのエネルギー事情は悪化し、冬季の暖房用エネルギーを水力発電に依存せざるをえなくなった。全電力の40%を担うトクトグルが灌漑を主たる目的として運用されたモードから発電モードに変えられてしまったのである。

そのため冬季凍結する下流河川では人工洪水が発生し、また4月以降のかんがい用水量が不足する事態が起こってきたのである。水位低下も人為的な操作の結果である。

従って、当初計画どおり発電モードを灌漑モードの運用に変えれば人工の洪水や渇水が起こることがない。ソビエト時代にintegratedされていたシルダリア川も3カ国に上下流で分割され、下流のニーズに上流が対応することはなくなってしまっている。

関連上下流国全てがwinになるためには、一度全ての国がloseする必要があるかもしれない。それが今後4ヶ月ほどで分かることになる。

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