2008年11月25日火曜日

09:中央アジアの渇水問題(その1)

中央アジア諸国は5カ国から成る。ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス共和国、タジキスタン、そしてトルクメニスタンである。

彼の地を意識したのは、92年ごろトルコのアンカラ空港で突然見知らぬ外国人に呼び止められた。彼は見たところ日本人にそっくりで、意味不明の言葉で熱く語りかけていた。英語が少し分かるらしく、彼がカザフスタンからトルコに研修で訪れ、祖国を離れ同国人を見たので話しかけたとの事。それだけ顔が似ていたのだろう。離れ際にさびしそうな表情をしていたのを今でも覚えている。

その後中央アジアに一度は行きたいと願ったが、ソビエト崩壊後日本政府がODAで参入するにはしばらく時間がかかった。95年から00年まではイランの仕事があり、北京からイラン航空でテヘランに向かう途中、ビシュケク、アルマータ、タシュケントなどの首都の明かりを機上から見るだけであった。

初めて中央アジアを訪問するのは05年であった。それ以後06年にも行く機会があった。

その中央アジアだが、今年初めから渇水の兆候が見られ、今年の冬から来年にかけて大渇水による水資源、エネルギーそして食糧危機が懸念されている。世銀やUNDPが主導で各国の協力を呼びかけている。先週火曜日にはドイツ政府が主導した国際会議が開催されているはずであり、その結果が如何なるものか報告を待っている。

渇水の兆候はシルダリア川の上流にあるキルギスのトクトグル貯水池の水位がここ数年下がり続け、来年春までに最低水位まで落ち込み、灌漑用水の供給が不可能となるというのが危機の要因である。

渇水には、大きく気象的、水文的、人為的の3種類があるが、主たる原因はトクトグルの貯水池運用という人為的な要因と考えられる。1911年から97年間のシルダリア川中流域の年間流量を見てもここ数年の流量が長期的に見て渇水だとは言えない。一方トクトグル上流域の流入量の凡そ40%は氷河や融雪によるものであるが、気候変動による影響かは信頼すべきデータがないので何とも言えない。

UNDPなどの国際機関や各国専門家間では渇水かどうか賛否両論あると聞いている。UNDP中央アジアヨーロッパ局から依頼され、水文情報を解析した結果を送った際には渇水の定義に基づき議論すべきを助言している。それにしても、IWRMがお盛んな昨今、国際機関に水文や貯水池運用について知見のある人がいなくなってきているのだろうか?管理ばかりで計画手法の基本を失っては管理どころではない。

現在、2週間ごとに主要大貯水池のデータが現地より送られてくるので、危機が迫った時には関連国際機関に知らせる体制になっている。コンサルタントは無償でサービスすることは少ないが、危機管理上の貢献である。国際機関やドナーの方々は権威や地位に拘りなくお付き合いができるので面白い。

後半年の間で、中央アジアの渇水が発生するか食い止められるかが判明することになろう。

0 件のコメント: