2009年5月29日金曜日

205:Facts findingの難しさ

海外での調査活動で最も難しいのは事実を見つけることである。信頼できる詳細な報告書でもあれば幸いだが、ない場合の方が圧倒的に多い。人によってさまざまな認識もあり、嘘とは言わないが事実を語らない場合もある。聞かないから言わないということもある。

従ってインタビューの際はできるだけカウンセラー的なアプローチをすることに心がけている。言わば、精神分析官のようなものだ。じっと耳を傾け、辛抱強く相手から事実を引き出す。それも何人もから。

そういう観点からいくと、今回の中大理工教授事件のマスコミ報道から見えてくる尋問からの断片的な報道にはかなり混乱させられる。

1.大学院に行きたかった
2.卒業時に不満があった
3.実は大学を辞めたかった

どう理解したらいいのだろうか?

時系列的な整理が必要だし、尋問者のアプローチも知りたいくらいである。

容疑者の心情を少し過去に戻ってじっくり聞いていくのが常道ではないのか。例えば、

1.中学ではどんな感じだったの?特に好きなこととか?嫌なことあった?
2.高校は何で公立を選んだの?結構優秀だったんだね。
3.高校生活はどんな感じ?趣味とか変わった?クラブとかは?
4.大学は第1志望?電子工学はやっぱ好きだったんだ。将来何か夢あったの?
5.大学は期待と同じだった?理工は結構課題とかあって大変じゃなかった?バイトとかは?
6.卒業論文テーマは自分で選んだの?それとも?一人で、それともチーム研究?
7.大学卒業後に不安はあった?あるいは期待とか?親のプレッシャーとかあったのかな?
8.先生はどんな感じの対応だったの?好きだった?
9.就職は自分で選んだの?結構会社説明とか行った?
10.大学院進学は受験してでも行きたかったの?推薦はどうだったのかな?やっぱ先生の研究室?
11.研究室の雰囲気はどうだった?友達に大学院に行ったひといるの?
12.就職してから、先生に何回ぐらい会った?どんなこと相談した?
13.卒業してからもう何年も経つけど、やっぱ先生が一番信頼できたのかな?

まあいろいろ状況はあるけど、精神分析に経験のある捜査官じゃないと彼の混乱した気持ちの整理は無理かもしれないかなと感じた。その結果マスコミの報道内容が支離滅裂になってしまう。確かに報道競争があるのでなんでも新情報が出れば雑駁に記事になるけど。

もっと緻密なインタビューと分析が必要ではないのかなと素人ながら思った。

海外でもいろんな人に聞くが聞けば聞くほど話がおかしくなる人もいて、同じような経験は多々あるのである。

芥川龍太郎の「藪の中」のように。

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