2008年12月26日金曜日

44:水道事業の第3のタップ

数年前に海水淡水化のF/Sに挑戦した。アメリカの塩水湖の調査をして以来淡水化事業には興味があったが、日本には国際基準を満足するのF/S報告書がなかったのでアメリカの例をお手本にした。場所は比国の某都市である。

アメリカのROではカリフォルニア、テキサス、フロリダが有名だ。確かテキサスのF/S報告書を参考にして調査計画を進めた。アジアモンスーン地域でのSWRO(seawater reverse osmosis)適用は少なかったので、シンガポールで進行中のプロジェクトも若干参考にした。

F/Sであるから、水需給計画、立地、原水評価、淡水プラント規模、取水方法、淡水化方法、電力供給、brine排水方法、環境影響評価、概略設計及び積算・工程計画、経済財務評価などを含むことになる。集められた各専門家は確かにその道のプロだったが皆さんF/Sの経験が無いという不安要素もあった。

作業を進めると案の定各団員から代替案比較ができないとの不満が続出した。特にプラント屋さんからはプラントの施設の決め打ち的な最終案だけが出され代替案なしという状況であった。事前処理、淡水生産効率の決定、後処理方法など丁寧に説明し、何とか了解していただいた。生産効率(淡水回収率)については最後まで60%だと強硬だったが、元デュポンのROの開発者であるモッチ博士から頂いたコメントを告げると、直ぐに幅を持たせた生産効率の検討をして頂いた。権威の言うことには弱いらしい。ただし、コストについては積み上げできないという有様だった。これについてはモッチ氏から直接手ほどきを受けた。彼は80歳近くだと思うが大変お元気で自ら現地に出向こうかという熱心さだった。彼はROの発明者だが1コンサルとしてのスタンスを維持している方である。

逆に、プラント屋さんからはROプラントの技術的な検討課題の「ツボ」もたくさん頂いた。まあ、give and takeだ。

SWROの場合はROの高圧ポンプ用の電力コストが馬鹿にならない。全体の30%ぐらいにはなる。O&Mコストと初期投資コスト両面の検討が重要になるわけである。例えば、20年連続運用して、1m3生産するのにいくらかかるか、そんな検討になる。後は水道料金との比較になる。

いつ海水淡水化が表流水や地下水開発案を凌駕するだろうか?そう言っているうちに第4のタップの実施や検討が中東やシンガポール、アメリカなどで進んでいる。所謂、排水処理水の再利用だ。

最後にSWROの欠点と利点。海水にはホウ素(boron)が含まれ通常のROプラント処理ではWHO基準を満たすことができない。経済性を考慮して給水システム上で地下水などと混ぜ希釈するのが一般的である。シンガポールでは希釈する淡水がないので事後処理する。

ホウ素はマウス実験では男性の生殖機能不全をもたらすという。こんな話をstakeholders meetingで言ったら、参加者のお女性陣が「フィリピンのだんなたちにはいいかも!!」と笑っていた。

いつも思うが、フィリピーナは何とチャーミングなんだろうか。

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