2010年3月7日日曜日

587:砂はなぜ溜まるのか?

当たり前の疑問なのだが、ダムに砂が溜まってもダムは機能するはずという設計者の安易な考えが問題なのかもしれない。このことについてはこのブログでもインドネシアの例を上げて何回かしつこく書いた。ゲート操作でRORの堆砂は排砂できると考えるし、ダムの場合は100年間はOKと確信してしまう。

今回の調査でも、当地の流れ込み式水力発電のバラージの設置位置が堆砂しやすい地形なのだ。上流にも滝があり、下流は直ぐ滝があり、水力発電にはもってこいの場所である。しかし、二つの滝の間の河道は緩やかであり、滝の直上流に頭首工を作れば、当然流速がさらに減じられ砂は溜まる、という当たり前の話なのである。勿論、上流域の著しい土地利用変化で土壌浸食が進んだことが主な理由である事例もある。マレーシアのキャメロンハイランドが最悪な事例である。しかし、堆砂を全て上流の土壌侵食のせいにするのはいかがであろうか。

プロのダム屋なら常識なのだが、経済性を優先して堆砂のことは次の段階であるO&Mで何とかなるだろうと逃げてします。そして、ドレッジングが永遠に続くことになる。浚渫する量は微々たるものだから滑稽なくらいな作業である。

ダムの「持続性」というものを慎重に考えれば、100年堆砂を比較的吸収できる貯水池を上流に置き、下流には流れ込み式を設置するのが安全策である。大規模貯水池のポテンシャルが無い場合はかなり対応は難しい。流れ込み式で堆砂が起きにくくするには、上下流の河道勾配に大きな変化がない場所を探し、落差は直下の滝で稼がないで、他の河川などに転流して稼ぐ。そういう地点をいくつも計画したことがあるし、建設後堆砂の問題が発生したと聞かない。勿論、転流先の河川の環境も考慮する。それができない場合はRORのピーク発電は諦めた方が賢明である。経済性重視が度が過ぎてしまうと危険だ。

インドネシア・スラべシや当地の場合は、頭首工地点で河道が上に凸になっており、必然的に堆砂が起きてしまうのだ。当地の場合は100%流れ込み式なので堆砂はそれほど深刻ではないが、スラべシはピーク発電をするため遊水池を設けているから排砂を効果的にする流速が得にくい構造になっている。かなり上流まで堆砂しており、一度堆砂して固まった砂はそう簡単には排砂できないのだ。洪水時に堆砂層に爆破でも仕掛けますか。

スラべシの堆砂問題解決の唯一の方法は、上流に100年堆砂を想定した貯水池式のダム発電所を新規に建設すれば下流のROR水力施設の持続性は確保されるのである。それ以外に解決方法はない。遊水池の再設計は絶対にしてはいけない。自然に無謀に立ち向かうことになる。RORのピーク発電は慎重な計画設計が要求される。

スラべシの調査は終わっただろうか?他人事だが結果をお待ちしている。

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