2009年8月20日木曜日

370:ダム堆砂対策

日本ではダム堆砂対策は、ドレッジングが主で実験的にはダムからの排砂が行われているがあまり効果的でなく環境的にも問題ありそうである。

元々ダムを建設すれば貯水池内には一定規模の砂が溜まる。100年堆砂を想定しダム運用に支障がないように設計することになっている。

ただし、堆砂量の推定誤差が激しく世界各国で予想を超える堆砂でダム運用の問題が顕著となっている。元々ダム堆砂量は水文屋が推定することになっているが80年代後半までシリアスに考えられることはなかった。良識のある水文屋がしっかり推定してもダム屋の横暴で推定量を却下されることが多かった。なぜなら、推定された堆砂量が過大なら経済的にダム貯水池建設が成り立たないからである。

またダム建設地点の河川勾配も大きな要素になる。上下流での河川勾配が大きく変化しないならばダム地点で過剰な堆砂はまず起こらない。

小生が係ったダムや取水堰でも問題が発生したことはない。

以前も書いたが、河川勾配が上に凸の場合、堆砂が進むことが多い。ダム屋は河川専門家ではないのであまりこれを考慮しない。

結局ダム或いは取水堰が完成して間もなく堆砂が異常に発生し、想定より速いスピードで堆砂が進み貯水池運用に大きな障害が発生する事例が後を絶たない。

具体の名前は伏せるが、そうした問題のあるダムの堆砂問題の解決は非常に難しい。

この辺が、ダム屋と河川屋の意識の違いの相違になってくる。河川屋は河道変動に真剣だがダム屋は堆砂は100年後だといういい加減さがある。

貯水池タイプであれば何とかごまかせるが、流れ込み式の発電所の場合は大変だ。そうでなくてもピーク発電を想定しているから日調整の池が堆砂でみるみる埋まっては危機的な状況と化す。一度溜まって硬くなった砂はゲート操作してもそう簡単に吐けるものではない。

こうした状況のいいわけは、上流域での土地利用の予想外の変化で異常な土砂流出となる。それも確かにあるが、問題の本質はそうではない。ダム地点の選定なのである。

従って、100歩譲って、ダム貯水池運用をリハビリしようとする場合は非常に細やかな堆砂シミュレーションを実施し、最適な構造的施策を施すことになる。

さてどうするか、こうした問題に対する水理的モデリングはまだ日本ではかなり遅れている。それに伴う構造的な手法も確立されていない。ある国ではモデル実験後最適案を選んだ実例は知っているが。

かなり実験的な対応に成らざるを得ない。プロ中のプロのコンサルの力量が問われる。ゼネコンのトンカチ的な提案を鵜呑みにするようではまずい。もし工事完成後欠陥があれば大問題である。ODAで実験は許されない。

さて、インドネシア南スラベシの例ではどのコンサルがこの難問に挑むのであろうか。恥の上塗りにならないことを心から望んでいる。

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