2010年9月27日月曜日

817:ある先輩のこと

彼のことを知ったのは実は社内ではなかった。

80年に、ある世界最高峰の水資源関連の刊行物に日本人の論文があった。アメリカ土木学会程度の論文集では普通のドクター論文が載せられても、この雑誌には載ることは新人には至難の業であった。査読だけで1年はかける。

天才と言われる僕のお師匠様で国際水文学会会長だったクレメシュ教授やコーネル大のラウス教授、ジョンズホプキンス大のコーエン教授などは最低年1回は何年も連続して載っていたから常連だ。ビスワス博士もそうだね。あのころは天才が多かった。コーエンは後に大学幹部になって専門家からは離れたようだ。コーエンにはMIPの応用を随分学んだね。あの頃は知的な部分では最高潮だった。今はいないって云うんじゃないけど、水資源管理には天才は必要ないんだよね。管理なんて実務的な組織管理だからね。数学じゃ永遠に解けない。管理を学びたいならアメリカよりイギリスをお勧めするんだけどね、みんなアメリカに行く。

クレメシュ先生のところにもたくさん論文が送られていて、ある時、関西の研究者から論文の査読依頼が来ていて、君これどう思う、と聞く。大したことないですね、と答えたことがある。推計水文学の大家にシステム分析の論文を送っても評価はできないよね。

だから、その論文集に日本人の新鋭学者が登場するのはビックリしたものだった。確か2回載っている。それで彼の名前は良く知っていたのだ。イタリアの学会で86年に会ったクレメシュもラウスも彼を絶賛してたね。

その彼が当時所属していたコンサル会社に突然入ってきたから2度びっくり。何で?というのが最初の疑問。

彼ともそれ以来現在メールを交換する程度の関係が有難くも続いている。僕は愚鈍なので天才肌の人を迷わず尊敬してしまう性質だ。天才肌の方とは気が合うのだ。天才の心理的な苦悩が理解できるからかな。

その彼も起業して15年。今では立派な社長さんだ。彼曰く、もう僕も61歳だよ、と。

彼は僕より5年先を歩んでいる。彼の生き方も素敵だ。いつになってもちょっと遠慮気味ではにかんだりする。トルコの田舎で一緒に仕事をした時、ヴェランダで、平山ミキ(?)「真夏の出来事」を口ずさんでいたら、その曲知っているのと?とビックリしてたっけ。そんな一面もある。

彼も米国などの海外生活で10年は修行している。だから英語もコンサル業界では超最高レベルであろう。その彼がトルコ人に僕を紹介する時、この人アメリカ人ですから、と云うもんだから冷や冷やもんですよね。

いい先輩が継続的にいい仕事をして、その後を多少見上げながらとぼとぼと時間をかけて歩いて行くのも心地いいものだ。愚鈍は天才の10倍頑張らないとついて行けない。

コンサルの若い人たちも心から尊敬できる「大物」の先輩をもっているといいね。いい刺激になり、生き方のご指南だよね。今の時代は探してもいないからさみしいね。淀五郎さん!!

0 件のコメント: