2009年7月3日金曜日

278:ダム決壊解析

日本ではダムは決壊しないという想定のもとでダムの安全を検討している。

Failure in safe

という概念である。

これに対して、海外ではダムは決壊する可能性があり仮に結果した場合どういう現象が起こり下流に対してどのような影響があり、下流住民を安全に避難誘導する対策を事前に練ることが必須である。

これは、Safe in failure

という概念に基づく。

従って日本が行う技術支援にはdam breakを対象とする調査や計画はない。途上国では通常ダム開発のEIAでダムブレイク解析と住民に対する警報・非難誘導対策が検討され、小生もインドネシアやマレーシアのダム開発で実施に参加したことがある。

中央アジアではウズベキスタン政府が主導し、地域国の河川構造物の安全に関する技術開発を進めている。ソ連崩壊後のダムなど河川構造物の劣化が深刻なのである。

さて、最近中国のダムの決壊が深刻になっている。設計など技術的な側面より建設に係るコントラクターのごまかしで施工に不備があることが原因となっているかと聞いている。

インドネシアなどではダム貯水池内の堆砂が問題であることが多く、設計洪水量を調整する貯水池容量が激減し、大洪水の際にダムを越流しダム決壊の危険性が高まっているケースも見られる。堆砂そのものを経済的に処理する方法は中々ないが、追加のスピルウェーを設置するしかなさそうである。しかしその際にダム決壊の解析を実施することはない。

一方、アフリカでも規模の小さなアースダムがかんがいと村落給水用としてコミュニティーレベルで作られているのはあまり知られていない。ダム高は数メートルである。こうしたcommunity-based small earth damsに対して日本の援助が可能かと言うと中々難しい。壊れるかもしれない恒久性の低い河川構造物への支援は説得力が欠けるのである。と言って、大ダムではコストがかかり過ぎ実現性は乏しい。

地下水開発は井戸を掘るだけなので比較的容易だが、こうした小規模なダムや取水施設も村落給水の水源として重要であり、どのような支援ができるかの検討が必要であると感じている。設計基準、施工水準、実例の検証、コスト、O&Mなど調べることは多そうだ。

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